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子どもには具体的で、より身近な話題・成果を

 先日、生徒さんからこんな質問をされました。
「先生、なぜ私たちは数学を学ばなければならないのですか?」

 私は何か身近な例はないものかと考えてから、次のように答えました。
「仮にあなたが100万円を銀行に貯金したとして、それも年利2%(複利)というとても有利な条件で貯金できたとして、10年後に一体いくら受け取れるのか計算できますか?」
「数学を勉強しないでいたら、正確には計算できないよね?世の中、計算が必要になる場面っていくらでもあるんだよ。」
「もっとも、この話は自分が利息を受け取る側だから、計算ができなくても別に損をする話ではない。でももしもあなたが大きな買い物をしようとする場合、例えば車を買ったり家を買ったりする場合、お金を借りなければならないことになる。まさか利息も無しでお金を貸してくれる親切な人なんてそうそういませんね。そうなると借りたお金は利子を付けて返済しないといけない。この時一体将来に渡っていくらお金を払わなければならないのか、しっかり計算できないと不安じゃない?」

 この生徒さんは「10年後に受け取れる利息の総額を計算する方法を教えてください」と言ってきました。ここで累乗という学習が効力を発揮するわけです。

 後日学校の数学の先生に、この生徒さんは同じ質問をしたそうです。
すると先生はこう答えました。
「数学を勉強するのは、将来役に立つからです。今は実感が湧かなくてもきっと将来の役に立ちます。」
これでは誰もやる気なんて出さないでしょう。「果たして学校で数学なんて勉強する必要なんてあるの?」ってより深い疑問を抱くでしょう。

 現在の中学生は3年生の終わり頃になると三角比を学習するそうです。
同じく生徒さんから「三角比なんて学習する意味あるんですか?サイン、コサイン、タンジェントを覚えて何の役に立つのですか?」と質問されました。
そこで測量というお仕事があり、異なる3点を結んで三角形を作り、出来上がった角度を測って距離を求める話をしました。
また中学1年生の地理で覚えさせられた三角点の意味を解説。測量と大いに関係があることを話すと納得してくれました。
 興味津々のこの生徒さんは、同じ質問を同じく数学の先生にぶつけてみたそうです。
すると・・・・・先生はさんざん考えてから「う~ん、将来何かの役に立つんだよ」と答えたそうです。

 子どもは何に対しても興味を抱く生きもの。素朴な質問に大人は真摯に答えてあげたいものです。
でもあまり遠い将来に役立つと言われても、やる気を刺激され努力することに繋がるとはとても思えません。
なるべき身近な話題で、しかも近い将来に効果が上がるような(成果を実感できるような)話をしてあげたいものです。

 残念ながら学校の先生という方々は、そのほとんどが大学を卒業してすぐに教職員試験を受けて教師になった人たちです。
知っている世界が学校周辺に限定されています、つまり知っている世界が狭いという難点があります。
しかも現代の教師の方々はやることが多すぎる。学校に拘束される時間が長すぎるのです。休日にまったくの異業種の人たちと交流を持ったりする時間もなかなか持てません(部活動の対外遠征試合や大会への参加などが、先生方の大きな負担になっていると話題に挙がっていますよね?)。恐らく学生時代は成績優秀で、学校の先生からの受けも良かった人たちだと考えられます。特に何も言われなくてもきちんと宿題を片付け、テストでも良い点数を取っていたのではないでしょうか?
だからこそ、学習する意味など熱く語る必要も感じない、と。

 子どもが抱く素朴な質問を軽く受け流すのではなく、どれだけ大人が真剣に答えられるか?
一見何気ないことが子どものやる気に、将来の進路に、大きく影響することを常々意識しておきたいものです。

by wp636 | 2017-05-10 04:18 | 子育て